アーサおじさんのデジタルエッセイ96

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第96話 中国の皇帝


目覚めると、天井には金箔の剥げかかった欄間が何本も暗がりに見える。

みゃあみゃあと、侍女達が物を運び、一日中、ごてごてとした服を着て、お金の掛かった高い、硬い椅子に座って、過ごす。

楽しいとは言えない。

朝貢の人々が頭を下げ、薄汚れても光る絹の織物や、造り込まれた名産品を捧げて来る。

自分への深い畏れを見せ、引き下がる。そのせいでどうも別の生き方を選ぶことが出来ないだけか。

もし街に出ても、風は冷たく道はぬかるみ、野菜は汚れて虫が付いていたのだろうか。

裸の王様?


浮浪者の手が肩を叩き、庶民の饐えた匂いが充満していたのだろうか。

大抵の人々は時代の流れに振り回されて、飢えたり捨てられたりと、苦しんでいる。

ただただ飢えのせいで皇帝に憧れるのかもしれない。ただただ皇帝は、漠然と飢えを恐れているのかもしれない。

21世紀には、そのような飢えた人々が少なくなっただろうか。

それは分からない。

しかしスダレを顔に掲げた不幸な皇帝が居なくなったことだけは、幸せなことである。

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           § 樂VIII樂 §
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       「また、お会いしましょ。再見」2002年2月15日更新


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