アーサおじさんのデジタルエッセイ57

日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る| 次へ進む

第57話 ノルウェーの森


知人の若い女性が、結婚のためにもうすぐ渡米する。こういった話がこれまでも何度かあった。その度にいつも「Norwegian Woods」の曲を想い出す。ビートルズ(Beatles)のこの曲は、不思議なニュアンスの詩でできている。原文に忠実にではなく、印象による翻訳をしてみよう。

――昔ね、『僕を好きだという女の子』がいた。と言いたいが、話は逆だったのだ。こっちがトリコだったんだ。今、そうだと分かる。ある日、彼女は『うちに来ない?』と言った。二人でワインを、あるだけ全部飲んだ。そして、彼女は突然『泊っても、いいよ』と言った。『でも、』と、付け加えた。『私、あした朝、仕事早いから…』と言ってから、大きな声で笑った。僕はこそこそとバスルームに潜り込むと、そこですっかり眠り込んでしまった。目が醒めると、もう朝で、彼女の姿は見えない。家の周りはすごーい「ノルウェーの森」で、窓辺に寄ると、小鳥が飛び立って行った。『どう、この森、素敵でしょ』と彼女が言ったのを思いだした。――

ノルウェーの森から


まあ、かなり違うだろう。ともかくそんな情景。この「小鳥が飛び立つ」というところが、なんと言ったらいいのか。きっと、素晴らしいことなのだ。鳥は誰にも縛られない生命本来の「自由」のこと。それが、自分の目の前で飛び立つ。離れて行くのに拘わらず、「その瞬間に立ち会う」事が出来るという爽やかな印象。自分は多くの人間の中から、選ばれてそれを見ているのかもしれない。この世界にたった一人で事件を目撃しているような切ない美しさ。その後は、フォレスト・ガンプのように、ベランダの椅子に座り、居なくなった鳥を芝の中にじっと探しているのだろうか。



             ◎ノノ◎ 
             (・●・)


   「 ユーカリの森もいいけどね」   2001年5月11日更新
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る| 次へ進む