アーサーおじさんのデジタルエッセイ547

日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む

第547 毒


 なんとなく、毒について。梅雨の時期だから腐りやすい肉類は気をつけよう。
別にユッケを食べなくともいい。
味が変わったならば食べないほうがいいものは多い。
サルモネラ属菌などの繁殖であれば大変なことになる。
 それから、腐敗と関係ない毒物というものもある。
 身近なところでは、うっかりと青梅を生で食すること。
ジャガイモの芽を食べること。アジサイを食すること。
 遠いところでは、絵の具の毒。
とりわけ油絵の具には昔からワルがそろっていたものだ。
白は鉛、青はシアン、黄色はカドミニウム、緑は緑青(これは日本画だ)など、いずれも猛毒だったりする(現在は安全な化合物に切り替えられるが、色の強烈さはイマイチとなる)。
たぶんアガサクリスティーにもあったと思うけど、昔の画家の工房は毒物の工房でもあった。
よく殺人事件のミステリーに活用される。

 水彩絵の具でもプロのものには毒物が使用されている。
なんとなくきれいな色だなあ、と思えばチューブのラベルに×マークが付いている。
これは言うならば髑髏マークである。
まあ、もともと、地上に存在する原色で、固定しているものの多くは毒物である。
ついでだけれど、毒蛇も毒蛙も毒キノコも美しい。
「美」を画布に固定させるには、「毒物」が必要になるとは皮肉なことである。
「美」は実は固定できないという本質があるかもしれない。
その固定を可能するのは恐ろしいことなのだろう。
 晴れた空の紺碧も、夕焼けの赤も、雨上がりの虹も、若い女性の美しさも、固定できない一瞬の命である。
「美」に憧れ、それを永遠にとどめることを求めるものは、時に「悪魔」の力を借りることになるのかもしれない。


             ◎ノノ◎
             (・●・)
               ^

         「また、お会いしましょ」 2011年6月19日更新


日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む