アーサーおじさんのデジタルエッセイ504

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第504 土も年をとるらしい


 子供の頃は土は土だと思っていた。
でもよく考えると、「つち」という元素は存在しない。
大勢という名の人はいない、みたいなものか。
大きくなるといろんな事に気がついた。
「普通の人」なんて世の中にはいない。
「普通の人」って職業は何だろう?
一人一人近づいて付き合うと、みんななんだか普通じゃない。
普通の顔してて「えー、そんなお仕事があるんですか!」と、知らない仕事をしている。
ひよこの性別鑑定、船乗り、脱サラで飲み屋経営。
どれなら、普通の人だろう?

 昭和天皇は植物の研究者であられたようだが、ある日、お付きの者が「その雑草はなんですか?」と尋ねたら、急に振り返って、むっとした顔で「・・・雑草という名の草はありません!」と言われたそうである。
ま、むっとしたかどうかは分からないけれど。
 話を戻すと、土という元素はないのである。
その土地のいろんな元素、岩石の破片や不純物、動植物の残滓有機体や、水分などが混ざっている。
だから、植物は必要な栄養素をその倉庫から借用もできるらしい。
 小さな頃は、水と土さえあれば植物が育つものだと思っていた。
あとは光合成で自力で栄養を作り伸びていくと思っていた。
そうではなかった。
土地というのは植物の「環境」だったのだ。
だから悪い環境ではそのようにしか育たない。
その中に生きていくのに必要なものが含まれていなければならない。
目黒区で、これまでの分別ごみ回収に加えて「植木の土」の回収を始めたそうだ。
植木の土は時間とともに次第に痩せて死んで、何も育たなくなるという。
これを近所の花壇などに捨てられると困るということで、回収し、再生・栄養化して再配分される計画だという。
人間も個別の生命力や才能で勝手に伸びてくれるものではない。
成長の過程で必要な環境が与えられないと育たないのだ。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2010年7月24日更新


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