アーサーおじさんのデジタルエッセイ430
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む 威厳というものは、結局は置かれた立場や役割で作られるものだろうかと考えていた。
			そうでもないのである。
			 ちょっと感動ものだが、内容はこうである。
			バレンシア市内に観光客のよく集まるプラザ・ビルヘンという広場がある。
			噴水があり鳩が飛び交う。
			シエスタにあたる時間はここに大勢の人がくつろいでいる。
			大道芸の渡世者もよく見る。
			ここに黒沢年男スタイルのおじさんがいた。
			緑色のセーターにポシェットを腰に締め、ほころびのある野球帽はどうみてもおシャレだ。
			ある時、彼が立ち上がって人を遠めに観察している。
			何かを発見すると、さっと身軽に近づく。
			そして・・・タバコを一本もらってくる。
			彼のベンチは端っこのオレンジの木の下である。
			そこに大きな袋の荷物も置いてある。
			誰も盗まない。
		

そこに水のみ場がある。
			近づいて来た男達は彼に笑顔で挨拶する。
			顔なじみなのだ。
			よく顔を見ると、ショーンコネリーそっくりである。
			こちらも思わず挨拶したくなる威厳のある顔である。
			上手くいかないと袋を枕にしてそのベンチに勢い良く横たわり、眠り始める。
			ああ、あのベンチは私も何度か座ったベンチである。
			 中国の寒山拾得のように、職もなく、金子も持たずに貫禄や威厳というものがあり得るのである。
			彼が、公園の住人であるホームレスらしいと分かったのは数日してからであった。
			              ◎ノノ◎
			              (・●・)
                  「また、お会いしましょ」 2008年12月28日更新