アーサーおじさんのデジタルエッセイ373

日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む

第373 エロチックなひと


  電車の中では混雑していても、座っている人は眠ることがある。
帰りの電車で、立っている私の前の若い女性も頭をフラフラさせていたかと思うと、隣の男性に頭を預けたりしながら、とうとう眠ってしまった。
少しして、ふと彼女を見て驚いた。
うっすらと目を開いて眠っている。
それも、黒い瞳がはっきりと現れるくらい、4ミリほどは開いている。
同じように唇もうつろに開いているのだ。
これは疲れて深い睡眠をとっている赤ちゃんで見ることがある。
それにしても、何だか違和感がある。
こちらは落ち着かない。

白い首をくらくらと揺らして、天井を見詰めるようなその目は、意識の火を点していない。
唇の奥は濡れた口腔を覗かせる。
脳幹と延髄を残して脳の機能は停止しているようだ。
睡眠の青い深海に溺れ、恍惚としている。
前頭葉が死んでいれば、およそ爬虫類の冬眠の状態である。
この人は事情があって、社会から一時的に冬眠しているのであろう。
ゴトン、ゴトン(と電車の音)。

             ◎ノノ◎。
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2007年8月19日更新


日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む