アーサーおじさんのデジタルエッセイ337
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む 以下は又聞きである。冒険家に会った人が、こう尋ねた。
			「北海道の原野に野宿されるそうですが、恐くはないですか?」
			「恐くないよ・・・“内地”に比べたら」
			「内地って、本州ですか?」
			「そうです、北海道以外の日本」
			「え、安全に思えますけど?」
			「冗談じゃない。本土は恐ろしいよ。一人で寝ていてゾッとするほど恐いよ。熊よりよっぽど恐い」
			 歴史がない原野は大自然や野性の脅威しかない。
			しかしその人が言うには、古い日本の大地には膨大な「歴史」がある。
			歴史には、恐ろしい過去の殺戮や抗争、確執、怨念が渦巻いていて、それらの霊が襲うことがあるのだそうだ。
		

			それこそ何が出るのかわからず、冒険家を震え上がらせるらしい。
			 話は変わるが、夜に読む本があるので枕元に小さな本棚を買って来た。
			横になっても本の背表紙が見えて嬉しい。
			本は次第に増えて、手前にも積み上げる。
			あれを読もうか、これを読もうか、ぱらぱらめくってウトウトし、そして眠りに就く。
			何週間かして、落ち着かないことに気がついた。
			心が騒ぐのである。
			深夜に目が醒めても、背表紙が目に付いて、その内容に駆られる。
			何冊もが声を掛けてくる。
			「読んでくれえー」。静かに眠ることが出来ない。
			やがて、手前に積み上げる本の量を減らし、本棚はカーテンで封じることにした。
			やはり内部に応じる魂があれば、襲われるのであろう。
         「また、お会いしましょ」  2006年11月26日更新