アーサおじさんのデジタルエッセイ291
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む小さな頃に見た風景を、人はどのように心の中にしまい込んでいるのだろうか。
褪せたセピア色の写真のように記憶されているのだろうか。
いずれにしても、もう失われてしまった風景は多い。
摩天楼(死語かな?)の足元で仕事に明け暮れる我々はなおさらである。
ところが、今朝、ふと昔の冬の朝の光景がよみがえった。
それは高層ビルの陰の小さな広場であり、人々が集まって煙を吐いている。
そう、出勤の前に灰皿のあるその場所で一服している人々。
煙があちこちから上がっている。
朝の焚き火を思い出した。
温暖化などの言葉のない小学校の頃の冬の朝。
ランドセルの下に肩をすくめ、通学路を歩いていると、焚き火に出くわす。
焚き木がパチパチと爆ぜ、煙がサワサワと紫色に昇っていく。
飯場の男達が暖をとっている。
これから仕事を始めるのだ。
いかにも地方の冬の光景である。
さまざまなミニ・コミュニティがあったのを思い出す。
焚き火、職員室のストーブ、体育館の日溜まり。
タバコを吸わない自分はもうそんな場を忘れていた。
そこには群れる楽しみがあったはず。
「また、お会いしましょ」 2005年12月3日更新