アーサおじさんのデジタルエッセイ278

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第278 秋の風が吹く時、出発しよう


何かが大きく変わる。

頭ではなく、言葉ではなく、事柄ではなく、体がそう感じることがある。

それは空気の温度のせいか?皮膚の論理か。

目を見開く。

その変化の生まれるところを見極めるため、周囲を見回す。

高層ビルの林が天に突きあがる。

互いに矛先を寄せ合うものの交わらず空間を残す。

そこには少し輝く空がある。

まだ生まれたての若い空は染みがなく、音や言葉に埋められてはいない。

邪気のない風がある。

何かが騒ぐ。

私は今、少し変わる。「昨日」が皮膚から剥がれ落ちたのを感じている。

そして何かが沁み込んで来る。

妙な感覚だ。高校生の頃、季節の変わり目にたびたび訪れた、あの出発の感覚。

人のいない台地、風の通る野生の穀類の生えた土地。わずかにうねる道。

そこから見えるものを見るために出かける。

どこかに帰る道を探すために、出かけなければならない気がする。

ビルに入る人の列に収容されながらも、その出発を感じている。

            

             ◎ノノ◎
             (・●・) 

         「また、お会いしましょ」 2005年9月3日更新


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