アーサおじさんのデジタルエッセイ250

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第250話 親指のすがた


お風呂に入り体を深く沈める。

そうすると、前方に脚が長く伸びていく。

五本の指のついた足がそれに直角に立ち上がる。

風呂の縁にあてて湯の中で広げる。

しげしげと眺める。

それから腕を伸ばしても、もちろん足までは届かない。

水中で手の指を広げると、不思議なことが起きる。自分の手指が短く太くなる。

子供の手のようになる。しかし横に向けると再び普通の長さの手に戻る。

ちょっと気に入るのは、親指である。

親指を水面に向かって突き立てると、短いが親指がくの字に曲がる。

私の親指はほとんど真っ直ぐなので、指圧の浪越徳次郎先生のような指の腹が外側に曲がっているわけではない。

けれども水中だけでは曲がってくれる。

突き立てた親指の腹が外側にしっかり曲がる、あの形に私はあこがれてきた。

美しい大人のモデルは長い親指が、猫足のようにさらに美しく曲がる。

きっと大人の形なのだと、思ってきた。

この私の指と、あの曲がった指の間には、なにか遠い距離がある。

その謎はいまだに解けない。



             ◎ノノ◎
             (・●・) 

         「また、お会いしましょ」 2005年2月13日更新


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