アーサおじさんのデジタルエッセイ249
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進むハウルという魔法使いの世界には、呪いを掛けられた者たちが登場する。
老女になってしまった18歳の少女。喋れない「かかし」も呪いが掛けられている何者かである。
ハウルと竃の火でさえ、互いに縛られている。決して人に言えず、呪いを解く方法も分からない。
本当の姿は違う、違うのだ、と何度も画面が叫ぶ。
思うに私たちも、かずかずの呪いが掛かっているのを思い出す。
それは口には出せない。もうあんまり長いので、どんな呪いだったかも忘れようとしてしまう。
誰がそうしたのだったか。
いつそうされたのだったか。
小さな頃には魔法使いがたくさんいたのだ。
どこかの魔法使いに、たしかに呪いを掛けられて、それを解くためにこれまで苦しんできた。
それを思うと胸がかきむしられる。
だって自分は思うようには生きていない。
言葉も思うように出てこない。
違うことばが口から出てくる。
手が違うことをしてしまう。
本当の自分はどんな姿だったのか。
もう分からない。
いつか突然に、鏡に自分の本当の頃の姿が映る日が来るかもしれない。そ
の時、ここから這い出ようと思う。
本来の自分、あの切なくて凛々しい自分を取り戻そうと思う。
「また、お会いしましょ」 2005年2月6日更新