アーサおじさんのデジタルエッセイ237

日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む

第237話 魔女と少女


ロスにいるその人は30歳になって初めてプーになった。

首になったのではなかった。

(たぶん有能で)別会社に引き抜かれたのだった。

じゃ、ということで休暇を貰って外国旅行を愉しんだり、のんびりした時間を過ごしていたのだ。

新会社に出たら状況が変わっていた。

謀反が起きて社員が大勢飛び出して大混乱なのだ、と言う。

え?「とにかく、後にして」ということである。

久し振りに自宅の庭を眺める日々。雨上がりの樹木の葉の陰にリスが動いている。

さて、どうしよう?いつまでも待っているのも問題だ。

近所を散歩していると、彼女は「ジェイコブなんとか」という花屋に求人の張り紙を見た。

この店では60人ばかりが働いている。

なにかムラムラと意欲が湧いてきた。

自分は小さな頃から「花屋さん」をやってみたかった。

簡単な書類で即、採用となった。

やっぱり日本人だなあ。

隣の店員と違って、ラッピングもちゃんとサマになる。

だってお店に出る前に教育なんてなにもないのだから。

見回すと店員は十代ばかり。

入った日から腕利き?のベテランみたい。

結構楽しい日々が過ぎる。

でもいつか元の仕事に戻らなければならない。

とはいえ、花屋の日々も捨てたものではない。

体の中に住む「小さな自分」の夢を叶えてあげている魔女のような今の自分。

満たされるというのはいろんな方法があるものだ。

お金(だけ)じゃないし、名誉(だけ)じゃない。

もっと探してみよう。と、魔女は考えた。



             ◎ノノ◎   
             (・●−)<

         「また、お会いしましょ」 2004年11月7日更新


日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む