アーサおじさんのデジタルエッセイ218
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む客の疎らな割烹は、自分達の注文した作業が、目の前の俎板で始まる。
		
それは新鮮な魚の解体であった。
		
板に海の住人の遺体を横たえ、大きな片方の目玉を天井に向けながら、その横の固い弓なりの鋼のような鰓に刃物を入れる。
		
体の半分もある巨大な頭を落とす。
		
幼児の手の平のような胸鰭を外し、鱗を飛ばす。
		
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腹に切れ目を入れると、窓のカーテンを開くように、魚は二つに割れ、赤い太陽がぞろぞろと飛び出す。
		
目の前で夕焼けが続いているようだ。
		
仕舞い風呂のように水が勢い良く打ち掛けられて、美しい白身の肌が現われる。
		
板前が丁寧に片側ずつ、優しく包丁を入れると、並んだ幼稚園児のように解き放たれた身が並ぶ。
		
いくつかの皿に菊・海藻と一緒に盛られ、きれいな刺身となって我々の前に現われる。
		
		
私達に与えられた収獲の量は、あの最初の彼の姿に比べて、なんと小さなものなんだろう。
		
食べるために存在したものは、それを支えて育てている巨大な内臓と感覚器官。
			
		
そして栄養摂取活動のための諸組織を従えていたのか。
		
そしてほとんどは俎板の外に消えた。
		
大きな原石から小さなダイヤが生まれるように、料理の一皿が生まれたのか。
			
			
		
             ◎ノノ◎   
		
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「また、お会いしましょ」 2004年6月20日更新