アーサーおじさんのデジタルエッセイ162

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第162話 アッシュダウン・フォレスト(ウォーキング2)


ウォーキングを始めようとした途端、トイレを求めて駅まで逆もどり。連休の家族連れがあれこれと入っていく建物にトイレはあった。

きれいなトイレで小さな男の子が手を洗っていた。お父さんが外で待っているのだろう。

トイレを出た途端、そこが展覧会の会場入り口であることに気付いた。

『A.A.ミルンとE.H.シェパード展』とある。

それは「クマのプーさん」のオリジナルの世界の展示であり、どこかでそのポスターのかわいいイラストを見て覚えていたものであった。

連休中にそんなデパートに出掛けっこないと思い、諦めていた展覧会だったのだからびっくりした。

ディズニーのプーさんは有名だが、こちらは「クラシック・プー」で素朴で美しいオリジナルのイラストである。

40代の劇作家のミルンのお話に、少し若い画家のシェパードが絵を付けて、1926年に誕生したこの物語は、世界で大ヒット。

いまだに巨大なロイヤリティを稼いでいるキャラクターである。

そうか、思わぬヒットがこうして成長していったのだなと思わせる展示である。

シェパードの様々な原画がある。その中に大人びたカットが幾つも並んでいて、熟練のペンさばきにおどかされた。

しかし年代を見てさらに驚いた。シェパード7歳頃の作品とある。僕は足がすくんだ。

ペン画の描写力は、まず「輪郭線」と「明暗」という要素を克服し、高めることが必要である。

さらに「動き」が描け、「人間の表情」を出せたら、演出的な表現力となる。

それらが一瞬にして処理されたペン使いで、状況を浮き彫りにしているのだ。

−−揺れる水面のボート。

見下ろす男達の筋肉。

硫黄の蒸気から逃げる子供たちの表情、英国風のそのファッション−−。

天才シェパードは、7歳にして物語画家であった。

プーさんは、当時の物語の中ですでに「ぬいぐるみ」である。

それが動き出し、再びぬいぐるみとして子供たちに抱かれる。

子供たちは、ミルンもシェパードも知らない。

どうして黄色いニンマリとしたプーさんじゃないのか不思議かもしれない。

出口そばのグッズ販売コーナーで「あ、やっとプーさんがいた!」と安心するに違いない。

私はこうやって2時間近く(英国の)“アッシュダウン・フォレスト”(プーさんの魔法の森)をウォーキングするはめになったのだった。



             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2003年5月25日更新


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