アーサーおじさんのデジタルエッセイ119
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雨が降る。夜が来る。残業を終わっての帰宅。
		
いつもの住宅街の暗い道のアスファルトが外灯でゆらゆら、しょぼしょぼと光っている。
		
大きなケヤキの落ち葉や、吹き飛んだゴミが濡れて転がっている。
		
その中に小石のようなシルエットが見える。
		
もしかしたら?近づくと、やはりそうだ。石なんかではなくて、プニョプニョの蛙。蝦蟇(ガマ)なのかどんな種類なのかは知らない。
		
家までに何匹かを見ることになる。
		
『何をしているんだ。どうして道路の真中にいるんだ!ここは車が通るんだぞ!』
		
僕は、不細工な土の精のような生命に、話かけるが通じない。
		
傘の柄で後ろの道路を叩く。つんつん。「(俺はそんな事じゃ、動かんぞ)」
		
「何言ってんだい!轢きガエルになちゃうんだぞ!」
		
そうこうしているうちに、タクシーが通る。
		
ヒエーッ。
			
		
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真中にいるせいで、潰されなかったようだ。
			今頃の季節、雨の翌日には、広がって煎餅になった彼らを見ることがある。
		
彼らの遺伝子には、「蛇」はいても「車」は入っていないのだ。
		
彼らは一体どこから出て来るのか?そして、どうして雨の日に出て来るんだっけ?
		
餌である昆虫が出て来るからだったっけ?それはともかく、人を恐がらず動いてくれない。
		
雨の夜の小さな憂鬱である。・・話が通じればいいのに。
		
『ここは車が通るから危ないよ。どうする?』
		
『俺、カエル・・』
			
			
		
       「また、お会いしましょ。」 2002年7月14日更新