「温泉偽装問題」について 温泉作家 簾田彰夫
週刊朝日 2004年10月8日 「温泉の達人」12人(温泉作家簾田彰夫参画)が選ぶ、秋のお薦め宿特集にピックアップされた温泉あるいは温泉宿共通に見られる点は、
・ 湯(源泉)にこだわり、お客様には湯を存分に堪能して欲しい、温泉宿の主人の思いが感じる。
・ 源泉そのものを自然の贈り物として大事にしている温泉宿の主の哲学
・もてなしが自然である。
以上の3つの要素に集約されることに気づきます。
大事なことはあくまでも 湯が主(中心)で、料理、もてなし、その他は従である。
湯に自信があるから過剰なもてなし等必要ない。
湯宿の主(オーナー)が天然の贈り物である「温泉」をどう考えているかが肝心ではないだろうか。
温泉、あるいは温泉宿は自然の資源(財産)を借り、温泉という商品、あるいは湯浴みというサービスの場を提供している、歴史的にも一種特殊な場である。
価値の交換の対象物が「自然の贈り物」でもあり、共有物といっても良い物である。
温泉の湯を大切にして「経営」に当たっている主(あるじ)と商業主義第一の「あるじ」では湯(温泉)の扱いや宿全体の雰囲気、もてなし、料理などに自ずと違いがでてくる。
昨今の温泉偽造表示問題に集約される状況は、消費者(客)に対する騙しの類が日常化していることの証であり、「温泉」そのものの成り立ち、歴史的背景、客との関係性を表層の部分でしか捉えられない「あるじ(経営者)」がいかに多いことを示している。
さて、前回「いい温泉」「悪い温泉」の見方を温泉エッセイの中で紹介するとお約束し、「いい湯」「悪い湯」の一覧表を提示しました。
今回は温泉宿の主(あるじ、経営者)の温泉経営哲学(ポリシー)めいたものを提示しました。
では具体的にはどうかというと、
・いい温泉であれば、湯以外の過剰サービスはしない。
(過剰なサービスはしないので価格は一泊15,000円内外。)
・あらかじめ、旅館に湯の状況を問い合わせると、いい温泉旅館はこちらの質問に丁寧に答えてくれる。
・宿の主(あるじ、女将)は出過ぎない。(表舞台にしゃしゃり出ない)
・「源泉、掛け流し」で無くともいい温泉はある(次回解説)。要は経営者が温泉を自然の贈り物として感謝し、守り続ける情熱をもち、お客に満足して頂くために種々の工夫(アイデア)を凝らしている。
・いい温泉旅館は料理や客室の立派さをアピールするのではなく「湯」そのものをアピールしている。湯小屋、湯槽、湯の説明(パンフ)。
など、宿の経営者にスポットをあててみました。次回をお楽しみに。
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