アーサおじさんのデジタルエッセイ91
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む蕎麦屋に掛け軸がある。「酒を持った男の絵」があり、"明日から禁酒"と書いてある。
その男は毎日、そう言って飲んでいるのである。これを見て、笑えるかなあ。なんか、痛い所を突かれたような気もする。
エジプトなどイスラムの世界では、禁酒は当たり前である。酒なんか売ってない。(たぶん、ほんとはある。)
音楽も快楽禁止ということで、売ってない。(ほんとはある。)
踊りも快楽だから禁止。ホテルに行くとやっと外人観光客専用のディスコがある。(でも、踊ってる人が現地人に思える?)では、子供は「遊ばないのか?」。
これが、もう10年以上前のその時の疑問であった。
カイロの街で一人になった僕は、真っ先におもちゃ屋を探しに出た。近寄って来る物売りに、「それより、おもちゃ屋を教えてくれ」と言った。人が並んでいる雑貨屋を見つけ、「子供のおもちゃを売っているか?」と尋ねて回った。
「ある」と女性が答え、中からプラスチックのピストルのセットを出してきた。「違う!これは<made in England>、エジプト製品を探している」と言った。
女性は首を振る。ない、と。
砂の吹き回る街を探し回った。あるのはお祭りの被り物だけであった。
鳴っているのは音楽ではなく"コーラン"であった。路地で「輪回し」をしている子供がいた。
その輪は、自転車の車輪の廃品であった。玩具屋のない文化。ぬいぐるみを造らない世界。
しかし、遊ばない子供はいない。
今彼等はどうしているのだろう?遊びが足らなくて、いま大人になってからピストルごっこなど始めている、ということはないだろうか?
「また、お会いしましょ」 2002年1月1日更新