アーサおじさんのデジタルエッセイ89
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進むアフガニスタンのアルカイダは、遺跡の上に軍事基地を作っていた。
日本の考古学者が70年代に発掘をしていたところだった。
朝日新聞にその沙漠の上で、戦車の残骸の前に立っているアフガン兵士の写真があった。
真っ青な空が背後に広がり、透き通ったセルロイドの定規のような太陽の光が、パキーっと横殴りに彼の顔に当たり、そのまま延長線上の地面に長い黒い影を引いている。
彼は眩しくて目をちくちくしている。
小麦色の沙漠は少女のように細かい鳥肌をたてて畝っている。
そこに"でん"と転がっているのが重く黒々とした機械の残骸である。
あれ、どこかで見たことがあると懐かしく思う。頭の中を探ると「星の王子様」にぶつかった。
『ねえ、羊の絵を描いてよ、ねえ』と、サハラ沙漠で飛行機が不時着した、サンテ・グジュペリの背後から人の声がする。
8日分の水、壊れて修理のできない飛行機を気にもせず、絵をせがむ王子様。
もしかしたらアフリカの村長の子供だったのかな。
メルヘンはリアルな写真の形で現れた。
でも、一万年も過ぎてから、遺跡と一緒に、破壊された戦車や砲弾の破片、機関銃の薬きょうなどが発掘されるのでは困る。
「目がちくちくする冬の陽」