僕はほんの出来心から「犬」のストーカーをしたことがあります。
以前から、"自主的な犬の行動"について興味を持っていたのですが、ある日、駒沢公園で珍しい体型の犬が"ひとり"で歩いてくるのを見たのです。
それは毛をきれいに刈り込んであるたいへんに太った清潔な犬でした。尻尾は「坊主刈り」だが終点のところを刈り残してあり、小さなライオンのようにユーモラスです。
首輪はあるものの、紐は無く、回りに飼い主は見えず、ぼっとり、ぼっとりと一人で散歩をしているのです。何人かの学生が手を差し伸べたり注目しましたが、振り向かず歩きます。これは「自分の目的で歩く犬」かもしれない。一体どうやってここに来たのか？そして、どこに行くのか？ 不思議に思った僕は、距離を置いて尾行したわけです。
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何度か他人の家の庭に寄り道をしながらも、長い長い距離を歩いてある家の前に立ち止まり、お座りをしました。その表札には中国人のような名前が書いてありました。僕はそばの駐車場のフェンス越しに犬くんの様子を観察していました。すると彼（？）はこちらを見ているのです。
距離はあるけれど目が合いました。「ガッフ」！。始めて彼が口を開いたのです。その声は、咳払いのようでいて恐怖に震えていました。それはそう。僕の「尾行」がばれないわけはない。
そして犬にとっても素性のしれない人間が追いかけてくるのは耐えられない恐ろしさだったのです。「ご心配は無用です」とか言って説明するのは難しそうなので、僕はあきらめてそっと踵をかえしたというお話です。
◎ノノ◎
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「では、またお会いしましょう。」 2000年4月11日