アーサおじさんのデジタルエッセイ64
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む 紫外線が降りてくる青い海面を、目の上に見ながら、シュノケールで息を吐く。
			味のしないマウスをくわえてフゴーッ、フゴーッと海上の外気に繋がる。
			みっちりとした塩水に包まれ、魚のように泳ぎ、くらげのように漂う。
			
			ただでさえ人気のない岩手県の海岸で養殖場の撮影をしていた。
			黒いウェットスーツのカメラマンは忍者のように、そこら中に潜って撮影を続けている。
			水中眼鏡で見る海中は、白く美しく、音もないのに音符の中に入りこんだように優しく語りかけてくる。
			
			自分の体がぶよぶよに膨らみ、青く染まって延びている。
			全身を重力の責任感から解放し、社会的な名前を海水に溶かし込む。
			胸を鰓(エラ)のように動かしながら、たっぷりと深呼吸をして、岩場で立ちあがろうとした。
			
			足の裏に岩の感触があるはずなのに、ぬんまりと柔らかく横に滑った。
			慌てた。
			
			慌てて手足をばたつかせ、シュノケールが口から外れた。
			
		
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			犬のウンコを踏んだ時のように、海中で恐怖に陥った。平和はどこかに吹っ飛んで、死と不可知が鰓に噛み付いた。
			やっとのことで陸上の動物に戻ったとき、その感触の原因が一匹の「ウミウシ」であるとわかった。
			
			何千種という仲間のある海中生物。「巨大な透明カタツムリがレースのスカートをはいた」ような奴だ。
			食用にもならないようだが、体内から抗ガン物質が発見されたという報告もある。
			そんな友情も交わしたこともない生物をプニョー、と踏んづけたのだ。
			
			あちらも大変だったろうが、僕もこの地上で誰もがぶつかる訳ではない稀少な経験をしてしまったのだ。
			どんなところにも五感の極地は潜んでいるのだ。(昔の話です)
			
		
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						               〜ノノノナナ
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  「 また、お会いしましょう」