アーサーおじさんのデジタルエッセイ545
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む 本棚から「料理大辞典」を探し出す。
茶碗蒸しの項目を繰る。
材料をチェックする。
卵が必要だということは分かっている。
あとはなんだろう?
小海老、かまぼこ、鶏肉(もも肉)、春菊、銀杏の実、シイタケ、そんなところか。
結構ややこしい。
茶碗蒸しの椀は数個はあるのを覚えている。
深いフライパンで直に蒸すことを考える。
買いに行く。
水からやるのか、沸いてから入れるのか?
まだ分からない。
卵を四個割る。
だし汁をパック出しでごとごと煮立てて作る。
3カップとある。
出しは冷ますように書いてある。
たいへんだ。
片手鍋に水を流しながら、出し鍋ごと浸けて冷やす。
のち、ミリンと酒と醤油、塩、砂糖少々で味付け。
玉子は濾すとある。
そんなやっかいなあ!
解き玉子なんて網で濾すのはたいへんだ。
逃げてしまうので、なかなか網を通らない。
それでも無理して通ってもらうしかない。
さて、具材を均等に茶碗に並べる。
春菊(三つ葉のこともある)は最後にするとある。
出し汁と解き卵を合わせたものを、トクトクッと茶碗に入れる。
なるべく静かに。
ヒタヒタまで入れたがこれは入れ過ぎと後で分かる。
なぜなら熱い椀を取り出すことが難しくなるからだ。
フライパンに碗を四個も並べると、隙間から椀を掴むのが難しい。強火で4分、後中火で20分くらいか。
ふきんを掛けて待つ。
時々覗く。
火が強すぎるとスが立つ。
「串で刺すと、透き通った汁が浮くくらい」で出来あがりと言うが、よく分からないので、適当に終わりにする。
春菊を乗せる。フタをして上からふきんで摘まみあげる。
こっそりと試食をする。
暖かくおいしい。
子どもの頃のゴチソウの味がする。
トロンとどこか切ないところがいい。
晩年のビビアン・リーだったかデボラ・カーだったか、誰だったかが、一人でベッドで暖かいスープを啜ると、母親や家族がそこに居るような幸せな気分になれると語ったという。
ベートーベンも「パンのスープ」が好物だったという。
ようするに残りパン屑を利用した暖かいスープである。
いくつかの料理は、こういう「あたたかさ」を心に運ぶための素材であるということがある。
◎ノノ◎
(・●・)
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「また、お会いしましょ」 2011年6月5日更新