アーサおじさんのデジタルエッセイ53

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第53話 ペルーの犬


ペルーは多民族国家である。ペルーは南米のブラジルの反対側にある。北米のアメリカ合衆国の下、メキシコから南は主にスペイン語を話す国が多い。ブラジルだけがポルトガル語である。スペイン語にせよ、ポルトガル語にせよ、本来の現地人の言語ではなく、侵略者の言葉である。ことばの本家はヨーロッパである。

でもNHKのスペイン語講座には、ほとんどスペイン人は登場しない。メヒコ、アルヘンティーノ、ペルアーノ、と南米が多い。現地と西欧人が混血して「メスチーソ」という人種になる。勿論、アフリカ由来の黒人「ムラート」もいる。かつてスペインは奴隷貿易を行っていたのだ。例のスピルバーグの『アミスタッド』は"友情"という意味のスペイン語である。スペイン語を話すペルー人たちは、スペインをどんな歴史で学ぶのだろう。


 さて、我が言葉仲間のある女性が先月13日にペルーに発った。ささやかに恵比寿の喫茶店でランチで送別をした。そのために彼女は、家を畳み、娘を独立させていた。一匹の犬だけが手放せなかった。荷物などまともには届かない国。動物移送の手続きは難航し、毎日が出国管理事務所・検疫訪問などでつぶれた。無理がある。あきらめようかと考えた。いやがる犬を車に乗せて横浜に向かう時、ふと思った。違う、これが生き甲斐なのだ。これこそが生きていくことなのだ。自分はこれで前へ向かう意志を手に入れて行くのだ。そう気づいた。

 それからは犬の手続き、問題の解決が日課になった。そして、現地に着いた時、シートの自分とバゲージの犬が空港ロビーで出会うのだ。それは一体何だろう?さまざまな今後の出来事に立ち向かう時、それが意味を持つ。その犬は自分の「勇気の塊」となるだろう。僕は訊き損ねた。つまり、今どんな犬を想像していいか困っている。しかし、その犬も種を超え、やがてペルーの犬になる。多民族国家の犬である。

            ◎ノノ◎ 
            (・●・)

    「ペルーのコアラ?」 2001年4月8日更新


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