アーサーおじさんのデジタルエッセイ502
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			「面白かったよ」と連絡が入る。
			嬉しい限りである。
			けれども、これがプレッシャーになることがある。
			別にそんな要求をされているのではないのに次回もうまくやらねばと力が入る。
			しかし、それはいけない。
			そんなことを狙って書いているのではないはずだった。
			 私の大好きなこの写真(朝日新聞2009年2月26日)。
			見出しは「努力したんです」とある。
			箱根園水族館のあざらしビリー君が披露している新芸は頭に手ぬぐいを乗せ、お銚子の入ったたらいを持って温泉に浸かる(さらにうっとっりと眼を閉じる!)。
			バイカルアザラシは臆病もので飼育も難しく、彼だけしかできない芸だが、頭に物をのせるだけでも大変だったらしい。
			集中力は10分しか続かないという。
		

			 人間に馴染んだ動物達がいろんな芸をおぼえるのはなかなか楽しいものだが、かなり不思議でもある。
			本来の性質にはありえない行動を、食べたい一心で訓練を受けて従うということである。
			かつてやはり新聞で見たのは「二足歩行で散歩をする犬」であった。
			鹿児島にいた「彼」は飼い主と歩いて長い散歩をすることで人気者であったが、夭折してしまった。
			おそらく期待にこたえるストレスが積もったのではないだろうか。
			なまじ才能があると、その栄光から逃れるすべを失うのだろうか。
			 そう、他人の期待に応えて頑張るのは、正当なことではあるのだが、どこかに一線があるはずだ。
			そこには自分自身との生命的な了解がついていないと体に害になる。
			イアン・ソープも突然水泳をやめた。
			自分のモチベーションよりも、他人の期待の方が過剰だったのだろう。
			「僕の人生には、もっとやれる別のことがある」と表明した。
			えらい、名誉ばかり追うとなかなか引け際を失う。
			 私だって普通に泳いで喜ばれるアザラシでいいんだもーん。
              ◎ノノ◎
			              (・●・)
          「また、お会いしましょ」  2010年7月10日更新