アーサーおじさんのデジタルエッセイ343

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第343 子犬が眠る箱


 このタイトルが気に入って、何か書きたいと思った。
眠る、という言葉で思い出すのは「眠れる森の美女」である。
眠るものはちょっといいものがいい。
鮫やティラノザウルスが眠っているのはあまり連想したくない気がする。
美女が眠るのは、贅沢だが連想を刺激するらしく、川端康成の名作に「眠れる美女」があり、そのタイトルと内容に刺激されたガブリエル・ガルシア・マルケス(コロンビアのノーベル賞作家)が数年前に「わが悲しき娼婦たちの思い出」を書いた。
これは冒頭に川端へのオマージュであると書いてある。
南米に旅行してきた知り合いのご婦人が、当地で買って来てくれたので私も持っているが、活字の大きい短い小説である。

南米だけで初版から100万部以上を刷ったというもの。
海賊版がその出版前から出回った。(あわてて、マルケスが印刷を止めて、最後の部分を一部書き変えたという)さすがラテンという感じである。
邦訳もつい最近に出た。
 90歳になる老人が、眠れる美女と一夜を過ごす話、と書きたいところだが、実はまだ読んでいない。
この短い小説をいつ読むことが出来るだろうか。
つまり、原文で、である。 
先日量販店の特別コーナーにこぎれいなダンボール箱がならんでいた。
上側に窓があり、透明プラスティックが嵌めてある。
中を覗くと、子犬が眠っている。
どの箱もどの箱も、美しい子犬が眠っている。
その子を撫でて抱き上げるには、表に書き込まれた何万円という支払いをし、購入しなければならない。
わが悲しき子犬達は、飼い主を待っている。


             ◎ノノ◎。
             (・●・)。

         「また、お会いしましょ」 2007年1月13日更新



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