私の住む敷地周辺は樹木が多く、大樹もある。そこは様々な鳥の憩いの場になっているが、特に目だち、一日中うるさいのがカラスである。
私が同時に認識できたのは30羽であるが、木々の上にいる数の合計はもっと多いだろう。
管理人さんの話では、管理人室の横の大きな樹木のてっぺんに3羽のカラス一家がおり、彼らがごみ捨て場をテリトリーにして、時折他のカラスの進入を拒んで戦っているそうだ。
その話を聞いてから、初めてカラスにも違いがあり識別できるのだという感覚が私に生まれ、それからはごみ捨て場でカラスに逢っても目を反らすことがなくなった。
このカラスのカア公、カアさん、カアくんの視座を想像することは奇妙なことである。
住居は地上20mもの上。住民を頭から見おろしている。彼らの行動範囲は、意外に狭いのかも知れない。
管理人さんの話から推測すると、敷地に対してのカラスの数を割れば、そうそう広くもないからである。
そうすると彼らのテリトリーはかなり立体的ということになる。カア公はフック船長(13話で紹介)よりもさらに3次元的地図に住んでいる。
深い飛び込み用のプールの上にいて、必要に応じてその深い水底に降りていくのである。
沈没船のような屋根の下でわれわれはテレビを見ている。