アーサおじさんのデジタルエッセイ276
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む 地球が氷河期に入った頃、宇宙船がたくさん飛んで来て大地に降り立った。
何億年もの進化で生まれた植物や動物、特に恐竜が死に絶え始めていた頃だ。
宇宙から来た彼らは寒さには耐えられたから、丁度、この時期を見計らって他の天体から飛んできたのだった。
銀色の葉巻のような宇宙船からぞろぞろと彼らは降りてきた。
なんだか悲しそうである。
自分の母星は環境の汚染で住めなくなり始めたのだ。
いつでも彼らはきちんと燕尾服を着て正装をしていた。
礼儀正しいお国柄なのだろう。
やがて、地球も再び暖かくなり、さまざまな動物が復活し、獰猛な大型獣も現れ始めた。
宇宙船のエネルギーも切れて、彼らも自力で暮らさねばならない。
極北と極南だけが安全に見えた。
彼らは一斉に南に移住を始めて、各地からおおぜい集まった。燕尾服一色。
地平を埋める彼らの群れはウッドストックの観客のようである。
魚を獲っては体に脂肪として蓄えた。
寒い時は肩を寄せ合って暮らした。
何代も過ぎて、だんだん母星の思い出も消えていく。
小さな子孫たちはこの星で生まれ、パタパタと手をたたいて無邪気に遊んでいる。
誰も食べたことはないけれど、ペンギンの肉は宇宙の星の味がするそうだ。
「また、お会いしましょ」 2005年8月21日更新