アーサおじさんのデジタルエッセイ267
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進むとうとうある銀行は、手のひらの血管を個人の認証材料にした。
僕は小さい頃から、手の甲に這った静脈の姿が好きだった。
指に力を入れると、扇の骨のように五つの腱が浮き出る。
その張りに押し出されて、太めの青いパイプがうねる。
屋根の上で昼ねをしている青大将(蛇の名前)のようだ。
ちょっとつつくと、プルプルと形を変える。
太く膨らんだところは指で掴めそうである。
押してみると反応があり、丸いパイプには内側からの圧力があるのが感じられる。
これが生きている証拠である。
人差し指で押しつぶす。
血流が止まっているに違いない。幾分かしびれるような気もしてくる。
そろそろ離すと、ぷくっと膨らんでくれる。
ここを毎日、毎瞬、たくさんの養分などが運ばれているのだ。
幹線道路だとすると、トラックがばんばん走っているはずだ。
静脈であれば、荷物を降ろしての帰途に違いない。
それでも老廃物は積み込んでいる。
指でいたずらするたびに、道路は腱の上を移動して逃げる。
やわらかな便利な道路である。
「また、お会いしましょ」 2005年6月19日更新