スリランカの古都キャンディのホテルで夜明け前、多数の水鳥の声をまどろみながら聞いた。20代の頃だ。翌日の撮影の現地モデルのことを考えていた。鳥の声は耳からではなく、腹や背中から入り込む。その鳥を知らず、姿を知らず、「エッシャーの版画」の鳥のように真っ黒なシルエットになって朝まで夢の中を飛び回り蠢いていた。
ところで、カラスの話になるが、何時の間に「カラスの鳴き声」が変わったのだろうか!? 先日、気がついた。我が家の敷地あたりで鳴いているカラスに「かーあ」は一羽もいない。「かっ、かっ、かっ、かっ…」と限りなく鳴くのだ。
驚いた。昼も、夜も、夜明けにも、絶対音感の人が聞いたら、楽譜の音程で個体が識別できる一定の音程で鳴いている。「亜っ、亜っ、亜っ、亜っ…」というのも「可、可、可、可っ」というのも。深い深い大きな空間の空の中で、立体的にステレオが鳴り、動き回る。昔、七つの子がいた頃カラスは「かーあ、かーあ」と鳴いていたはず。
さて、キャンディの翌朝は熱帯の甘い太陽が照りつける上天気だった。モデル(6歳の女の子)は長い睫毛で、肌はチョコレート色に輝いていた
◎ノノ◎
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「きょうも、働いているかーあ。」 2000年7月6日