アーサーおじさんのデジタルエッセイ151

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第151話 ただならぬ不安


なにか都合があって、財布を別のポケットに仕舞い込んだら大変だ。歩いているうちにそのことをすっかり忘れてしまう。お店に寄って、レジに向かう。

「お客様、480円です。」「フム。」と右手をお尻の財布のポケットに触れる。

“ババーーン”と電気が走る。

『あ、財布がない!!』目の前は凍りつき真っ白になる。

レジの若い女性の姿も、店内の音楽も全て消え、フリーズしてしまう。

脳のパソコンがグルグル動いて考えている。

検索機能が一生懸命デスクトップ内をリサーチしている。

ついでに『財布が出てこない時はどうする?カードを使うか?それとも、あ、財布忘れてきちゃった!と言って、ごめんなさい、それもういいです。と断るか?どこかのポケットに千円でも間違って入っていないだろうか?』などと目眩の中で高速思考する。

そして−−−別のポケットが膨らんでいることに気付くと、世界は氷解し、突然カラーに戻る。その間、一体何秒だったのだろうか?

NYでビルに飛行機が突っ込んでも、韓国の地下鉄が火災に遭っても、もちろん驚くけれど、なんともこの財布の移動状態が生むアドレナリンの激烈な放出は、個人的な事情で行われる。

誰にも見えないのに、とんでもないジェットコースターが出現する。

世界の大きなドラマは実は個人的である。

ところで、荷物を幾つも持って歩いている時に、ただならぬ不安を感じる事がある。なにかを忘れているような不安。

それは背中の付近に由来することに気付く。

1、2、3、と荷物を数える・・。

あ、ランドセルだ!いまだに背中にはランドセルの余韻が残っていて、その不在の感覚が訴えて来るのだ。

6歳から6年間、背中にあったお荷物は、亡霊のように時々蘇るのだ。

そんな物忘れをしたままの感覚で、今日も会社に向かっている。

    

             ◎ノノ◎
             (^●^)

     「また、お会いしましょ」 2003年3月9日更新


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