アーサーおじさんのデジタルエッセイ138
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む高層ビルの上から、東京湾に面した「浜離宮」を見下ろしていると、紅葉と深い緑の四角いエリアは、季節のシャーレーのようである。
シャーレーとは、ガラスの培養器である。
さまざまな季節色がせめぎあい、重なりあって、蠢き、一応の安定に達している。
それでも明日はまた変化する。
毎日を感受して反応している。
そこには人影があり、二人が離れて立っていたりする。
あれは一方が写真を撮っているのだ。
何故そうと知れるのだろう。
片方は散策路の中央、一方は芝の淵にいる。
暫く動かない。やがて添って歩き出す。
見えない笑顔までが見えて来る。
そうして、深深とした緑の中ほどから、紫煙が棚引いて昇っている。
草木を燃しているのだろうか?思い出すのは炭焼きの煙。
そんなことがあるものか。どんなに森が深くとも、入場料を払って入る東京都の庭園だ。
山人がいたり炭焼きが住んでいたりする訳がない。
しかしそう見ると、なんとものんびりとして見える。
煙はあんなにもシアン色の透明度を持っているのだ。
どこかに猿もいるだろうか?
なにげに中国の山水画に見えてくるから乙なものだ。
「また、お会いしましょ」 2002年11月30日更新