アーサーおじさんのデジタルエッセイ130
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む箱根湯元の温泉街は周囲を「箱根の山」で囲まれている。電車を降りて突き当たりには緑の山が壁になっている。温泉街の地図で見ると、そこに1本の点線が引かれ、「鎌倉古道」と書かれている。
この点線は地図から外れ、その先はいずれの国に辿り着くのか知れない。気になって歩いてみることにした。
カメラと携帯電話とウーロン茶、地図とNHKの語学のテキストブックのみをリュックにいれて、帽子を被り、いきなり闇のような木立の中の坂道に入った。
ほとんど視界の遮られた小道は、石敷きでのっけから胸突きであった。
ごろた石は足に不安定で、足首を捻りそうだ。30分はこの状態。次の30分は天国へ登る長い階段のように永遠に向かって続く杉林の根っ子達が段をなしている。
小さなシラミが繊維の目を乗り越えて歩むかのように長い腕のような根の1本1本を体で数えなければならない。
汗がぽたぽたと落ちるようになると、シャツもぐっしょりでなかなか気分が良い。しかしいつまでも光も見えず、区切りが見つからない。
このまま林の闇を登り続け、立ち止まる時が来るのだろうか?
人声がした。反対側から来た「おばちゃん達」が坂道で休憩している。「こんにちわぁ」と声を掛ける。いろいろ聞いて見る。
今日箱根湯元に下りてそのまま電車で帰るという。「この先はどこに着くのですか?」あまりピンと来ない地名など告げられる。ずっとこんな調子ですか、何か頂上とか展望場とかないのですか?そうね、少し行くと開けてて、花が咲いているよ。「花?」ありがとう、そこまで行くことにしよう。
それから30分。花はよく分からない。けれど平地で太陽の光が差す場所があった。
ここにしよう。偶然の行程に展望台を望むのは無理だろうし、僕はいい年なのだから。お茶を飲み、テキストを何ページか読み、そこから木立の写真を撮って、帰ることにした。
僕は2つのことを感じ始めていた。(つづく?)
「体調崩さないでね。」 2002年10月5日更新