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第12話 スケルトンの街 


 くだもの色に染めた透明プラスティックの品々。中の機械やICチップが構造でのぞける代物。スケルトンは「骸骨」。「透けるとん」は誤解。

  深夜のオフィス街は、高層階の窓から見るともうネオンも消え、道路に沿って外灯が帯となっている。静かに更けていく。

 隣の高層ビルを斜めに見ると「スケルトン」してる。一層一層ごとにワイシャツのひとが静かに歩いていたりするのが見える。声も聞こえず、顔もよく見えないが、確かに人間の形をして動く。手には白いペーパーを握って、なにかを悩んでいるのかも知れない。

 キューブリック監督「2001年宇宙の旅」で見た宇宙船の窓の中の風景のようでもある。 そいう光景が築地のトロ箱のように重なって光っている。 考えてみれば、もうすぐ「2001年」ではないか。僕は本物の「2001年宇宙の旅」を見ているのかも知れない。

 いとおしくもあるこのビルのスケルトン。 深夜にトイレに行けば、真横の広い窓外に広がる築地の隅田川。 僕は地上、100メートルにておしっこをする。

 明日の朝、見上げながらこのビルに向かう僕自身が「昨晩の僕」を「あ、あんな高いところで、おしっこしている。長ーく放物線を描いてるっ」と見ているかも。


             ◎ノノ◎
            (・●・)

「6時半ころは、空がピンク色」 2000年5月31日


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