アーサーおじさんのデジタルエッセイ107
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む僕の近しい友人が、悪夢について、こう語る。
「悪夢は僕をしばしば救ってくれた。そんなことが想像できるか?」友人が言うのはこういうことだ。
かなり長い間、家庭が苦しい時期が続いていて来る日も来る日も、地獄のような日々、怒りに満ち、自殺を考えたり、立ち直ろうと努力したり、そんな時、眠れぬ明け方に今度は、悪夢が彼を襲う。
人間とは思えない暴力が迫り、大勢が寄ってたかって逃げ場のない自分を非難する。
得体の知れないものに食いつかれ血みどろになり、幽霊が纏わり付き体に入り込む。
誰もが恐れる病原体に侵される。
脂汗を掻き、うなされながら目覚めると、今度は地獄の現実が始まる。
ああ、また一日が始まる。
しかし、悪夢から覚めた時だけは、夢から醒めることを望んだことに気がついた。
そうだ、あの夢は自分を現実に送り出す役割をしてくれている。
これ以上有り得ないほど、生命の震えるシナリオを編み出して僕に提供してくれている。
『あの“夢のほうが現実”でなくて良かった』と思えるシナリオ。
どうか、今夜も、呻き声をあげるような悪夢に包まれますように。
と。
「また、お会いしましょ。」