- 温泉のガイドブックや事典は、旅館の入浴施設や料理、付近の名所案内が多く、湯そのものを解説しているものが少ないので、いい湯鑑定団が全国「温泉場事典」をつくることにしました。温泉名、所在地、温泉の三要素(湧出量、泉質、泉温)、温泉の概要、宿数、共同湯の有無、交通機関による旅程、車による旅程の順に解説しています。いい湯は豊富な湧出量と、泉質の良さ、そして沸かす必要がない泉温(温度)が三要素ですから、これらの条件にあう温泉場を主に選んでいます。大深度ボーリングによる新興の温泉は循環湯が多いので、取り上げていません。
バブル崩壊後、温泉観光都市の老舗旅館すら倒産する時代です。またボーリングによる新湯も続々登場しています。温泉場の収容人員、旅館数、室数などは各旅行会社の資料を基礎としたが、改築や廃業などがめまぐるしい今日であり、一軒宿の温泉場については、行かれる前に直接宿にご確認下さい。(2004年1月6日現在の温泉場の数は20、岩手県、秋田県の一部)
- 網張温泉あみはりおんせん:岩手県岩手郡雫石町長山字網張
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)82リットル(★)。2.泉質:単純硫黄泉、PH5.9(弱酸性泉)、3.泉温:92度。
- 概要:岩手山南西麓の眺望のすぐれた高原の温泉場で、岩手山麓国民休暇村。和銅元年(715)発見の伝承があるも由来は不詳、古くは帝釈温泉といわれた。国民休暇村から10分ほど山道を登った先に露天風呂「仙女の湯」(男女各1)があり、秘湯の一つで湯質もすぐれている。源泉数1、動脈硬化、胃腸病などに効能がある。保養温泉で、娯楽施設はない。
- 宿は3軒(収容人員578)。
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線盛岡駅→網張温泉行きバス1時間、終点下車徒歩2分。
- 車:東北道盛岡IC→R46号線、県道経由27km。(いい湯鑑定団)
- 鶯宿温泉おうしゅくおんせん:岩手県岩手郡雫石(しずくいし)町鶯宿
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)1,295リットル(★★)。2.泉質:単純硫化水素泉、PH7.8 〜PH8.5(弱アルカリ性泉)、3.泉温:59度。
- 概要:岩手県の中央部、秋田県境に近い渓谷の温泉場。伝承によると昔傷ついた一羽の鶯がこの湯に浴し、たちまち全快して飛び去ったのを見てこの湯が発見されたという。開湯は天正年間(1573〜1582)といわれ、源泉数8、創傷、胃腸病、リュウマチ、婦人病などに効能がある。長い間、農民の湯治場であったが、盛岡市郊外という立地の良さによりバブル期から観光温泉化しつつある。岩手山の群発地震の影響により湧出量が減少し、ボーリングした旅館もある。
- 宿は25軒(収容人員:旅館1,663人、自炊部120人)。
- 共同湯:1。
- 交通:東北新幹線盛岡駅→鶯宿温泉行きバス90分、終点下車すぐ。
- 車:東北道盛岡IC→R46号線、県道経由20km。(いい湯鑑定団)
- 大沢温泉おおさわおんせん:岩手県花巻市湯口字大沢
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)455リットル(★★)。2.泉質:単純泉、PH8.5(弱アルカリ性泉)、泉温64度、
- 概要:花巻市の西郊外、清流豊平川沿い志戸平温泉を過ぎて2km北西進した山峡の温泉場。湯は無色透明、宮沢賢治や高村光太郎が通った温泉として知られる。由来は坂上田村麻呂が蝦夷征討の時に発見したと伝えられているが不詳。源泉数4、リュウマチ性疾患、運動機能障害、神経症、神経麻痺などに効能がある。保養、療養温泉で、娯楽施設はない。
- 宿は1軒、但し山水閣本館、別館、菊水館に別れている(収容人員:旅館200人、自炊部152人)。
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線新花巻駅→新鉛温泉行きバス30分、大沢温泉下車すぐ。
- 車:東北道花巻南IC→豊沢川ぞいに県道で12km。(いい湯鑑定団)
- 金田一温泉きんだいちおんせん:岩手県二戸市金田一
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)3,082リットル(★★★★)、2.泉質:単純泉、PH6.7 〜PH8.3(中性泉、弱アルカリ性泉)、3.泉温:38度、ボーリングによる湯で、泉温も夏以外は加熱を要すのでやや劣る。
- 概要:岩手県の北西部、田園風景が広がる温泉場。寛永3年(1626)に発見され、その後南部藩の湯治場になり「侍の湯」と呼ばれた。昭和29年ボーリングに成功し、温泉町として急速に発展した。リュウマチ性疾患、運動機能障害、神経麻痺、神経症などに効能がある。源泉数7、戦後の新興温泉場であり旅館数は多い。
- 宿は16軒(収容人員899人)。
- 共同湯:1。
- 交通:JR東北本線金田一駅→金田一温泉行きバス5分、終点下車すぐ。
- 車:八戸自動車道一戸IC→R4号線経由15km。(いい湯鑑定団)
- 国見温泉くにみおんせん:岩手県岩手郡雫石町橋場
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)268リットル(★★)、2.泉質:含硫黄ナトリウム硫化水素泉、PH7.1(中性泉)、3.泉温:55度、効能が高く愛好者が多い秘湯。
- 概要:秋田駒ヶ岳(こまがたけ1,637m)の南西麓標高880mにある温泉場で駒ヶ岳への登山基地となっいる。発見は元禄時代(1688〜1704)、文化年間(1804〜1818)に開湯と伝えられる。湯は白色、澄んだ緑色など、古くから薬師の湯といわれ、湯治客が多い。源泉数2、神経痛、リューマチ、胃腸病、肝臓病などに効能がある。保養、療養温泉で、娯楽施設はない。
- 宿は石塚旅館、森山荘の2軒(収容人員:旅館145人、自炊部145人、冬季休業)。
- 共同湯:1(国見山荘)。
- 交通:東北新幹線盛岡駅→田沢湖行きバス1時間、国見温泉口下車送迎車10分。秋田新幹線雫石駅→タクシー35分。
- 車:東北道盛岡IC→R43、県道経由36km。(いい湯鑑定団)
- 夏油温泉げとうおんせん:岩手県北上市和賀町岩崎新田
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)360リットル(★★)、2.泉質:含硫黄ナトリウム・カルシウム・塩化物・硫酸塩泉、PH6〜PH7.9(中性泉)、3.泉温:72度。
- 概要:国民保養温泉の一つ。夏油川に沿って山峡の難路を進んだ標高700mにある温泉場。地も高く山も深い一種の仙境をなし、新緑、夏の涼しさ、紅葉の美しさが有名な秘湯。嘉祥年間(848〜851)の発見と伝えられ、江戸時代から胃腸の湯として温泉番付で大関を張った名湯。源泉は14あり、湯は白色、無色透明などさまざま。渓流に沿って大湯、疝気の湯、洞窟の湯、真湯、滝の湯、女の湯、新太郎の湯と7つもの天然露天風呂があり、現在に至るも湯治客が多い。なお、天狗の湯における石灰華の沈殿は高さ20m、頂上の太さ10m、下部径25mに及び日本最大で、天然記念物に指定されている。慢性消化器病、慢性皮膚病、虚弱体質、慢性婦人病、動脈硬化などに効能がある。保養、療養温泉で、娯楽施設はない。日本で最初にクワハウスが作られ、多角形の浴場には、かぶり湯、泡沫浴、圧注浴などの浴槽がある。
- 宿は4軒(収容人員:旅館490人、自炊部350人、冬季休業)。
- 共同湯:1。
- 交通:東北新幹線北上駅→夏油温泉行きバス1時間、終点下車すぐ。
- 車:東北道北上江釣子IC→R107号線経由25km。(いい湯鑑定団)
- 玄武温泉げんぶおんせん:岩手県岩手郡雫石町長山
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)270リットル(★★)、2.泉質:含食塩重曹泉、PH8.2(弱アルカリ性泉)、3.泉温:39.5度。
- 概要:岩手山南麓の温泉場。慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷などに効能がある。由来は不詳。保養温泉で、娯楽施設はない。宿は数軒。
- 共同湯:なし。
- 交通:秋田新幹線雫町駅→玄武温泉行きバス20分、終点下車徒歩1分。
- 車:東北道盛岡IC→R46号線、県道経由23km。(いい湯鑑定団)
- 志戸平温泉しどたいらおんせん:岩手県花巻市湯口字志戸平
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)817リットル(★★★)、2.泉質:ナトリウム硫酸塩・塩化物泉、PH8.2〜PH9.1(弱アルカリ性泉)、3.泉温74度。
- 概要:花巻市の西郊外、清流豊沢川沿い山峡の温泉場。南花巻温泉郷の入口に位置し、木造旅館が多い中で当時近代ホテルをいち早く建設したことにより人気が集まった。湯は無色透明、薄い白色など、源泉数5。由来は坂上田村麻呂が蝦夷征討の時に発見したといわれるが、開湯は元禄年間(1688〜1704)といわれる。源泉数5、慢性皮膚病、慢性婦人病、動脈硬化症、創傷などに効能がある。ホテルは観光温泉、自炊部は保養、療養温泉。
- 宿は3軒、ホテル志戸平、志戸平温泉旅館、清風苑、但し、同一経営。(収容人員:ホテル及び旅館700人、自炊部130人)。
- 共同湯:1。
- 交通:東北新幹線新花巻駅→新鉛温泉行きバス25分、志戸平温泉下車すぐ。
- 車:東北道花巻南IC→豊沢川ぞいに県道で10km。(いい湯鑑定団)
- 須川温泉すかわおんせん:岩手県一関市厳美町祭畤山国有林
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)5,000リットル(★★★★★)、2.泉質:酸性・含硫黄・鉄・アルミニウム・硫酸塩・塩化物泉、PH6.8(中性泉、酸性泉)、3.泉温70度。
- 概要:国民保養温泉の一つ。岩手、宮城、秋田の三県境にまたがる栗駒山(須川岳1,627m)の八合目、標高1,120mにある我が国で代表的な高原の秘湯。雲海を眼下にながめ、鳥海山などが一望できる景勝地。温泉の歴史は古く日本三大実録(873)に酢川と記されており、この頃の発見といわれ、徳川時代から300年以上にわたり湯治場として利用されてきた。源泉は2つであるが、岩手県一の毎分5,000リットルの湧出量を誇り、溶岩丘の下から滝のように流れ出た白色の酸性泉が宿の脇を通って湯の川となっており、湯好きにはたまらない景色である。雲上の男女各大露天風呂や、千人風呂のほか有名な天然蒸し風呂「おいらん風呂」などがある。源泉数2、呼吸器病、胃腸病、皮膚病、リューマチ、心臓病など多くの病に効能があることで有名。保養、療養温泉で、娯楽施設はなく、転地保養に好適な高原である。
- 宿は2軒、岩手県側は老舗の須川高原温泉、秋田県側は引き湯により最近建築されたホテル型式の栗駒山荘がある(収容人員2軒合計352人、冬季休業)。
- 共同湯:2。
- 交通:東北新幹線一ノ関駅→須川温泉行きバス1時間30分、終点下車すぐ(一日2本)。
- 車:東北道一関IC→R342号線経由39km。(いい湯鑑定団)
- 台温泉だいおんせん:岩手県花巻市台
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)325リットル(★★)、2.泉質:含硫黄ナトリウム硫酸塩・塩化物泉、含硫化水素食塩芒硝泉、PH7.7〜PH8.1(弱アルカリ性泉)、3.泉温:100度。
- 概要:花巻市の北西郊外、湯の沢沿いの閑静な温泉場で花巻温泉郷の湯元。脚を痛めた鶴がいで湯で治していたことから発見され、元中4年嘉慶元年(1387)の開湯と伝えられる。源泉は18と多く泉質及び効能もそれぞれ異なっていることで有名。創傷、慢性皮膚病、、慢性婦人病、動脈硬化症、リューマチなどに効能がある。昔からの湯治場的な雰囲気が色濃く残る温泉場で、建物の老朽化などにより客足が遠のいた。保養、療養向きで娯楽施設はない。
- 宿は12軒(収容人員901人)。
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線新花巻駅→台温泉行きバス25分、終点下車下車徒歩3分〜10分。
- 車:東北道花巻南IC→県道経由5km。(いい湯鑑定団)
- 玉川温泉たまがわおんせん:秋田県仙北(せんぼく)郡田沢湖町玉川字渋黒
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)9,000リットル(★★★★★)、2.泉質:酸性明礬泉緑礬泉、PH1.1〜PH1.2(強酸性泉)、緊張性低張高温泉、3.泉温:98度、一つの源泉では湧出量、泉質、泉温とも日本一の名湯。
- 概要:国民保養温泉八幡平温泉郷の一つ。焼山(1,366m)の西麓、玉川上流の渋黒沢沿いブナの原生林に囲まれた山峡の温泉場。鹿が傷を治していたところから「鹿の湯」、「鹿湯」、また沢の名から「渋黒温泉」とも呼ばれていた。江戸末期から湯を用いていたが、昭和10年頃から「玉川温泉」と呼ばれるようになり、湯治場として宿泊施設が整備された。
源泉は大噴(おおぶけ)といい98度の熱湯が毎分9,000リットルも沸騰しながら自然湧出しており、一つの源泉からの湧出量としては日本一で、見る人を圧倒する。
玉川温泉は旅館部と自炊部からなり収容人員700人、ゴールデンウィークの春から晩秋まで営業している。最近、「新玉川温泉」が建設され規模もほぼ同じで収容人員700人のホテル(自炊部はない)であり都会からの客や若者に人気がある。両温泉とも同一経営、源泉も同じ「大噴の湯」である。
- 浴室は両温泉とも男女別で、1.源泉100%の湯(PH1.2の源泉でぬるめの湯)、2.源泉50%の湯(42度〜43度と比較的熱めの大浴場)、3.熱い湯(44度〜45度)、4.温(ぬる)い湯(40度以下)、5.気泡湯(底から気泡が沸いている)、6.打たせ湯(筋肉マッサージの効果が高いものの、ほかの温泉のように直接打たせ湯をすると皮膚が赤くただれるのでタオルなどを当てる必要があり、長時間同じ所を打たせることも禁物)、7.寝湯(横になって首まで浸かる温(ぬる)い湯、8.頭浸湯(仰向けに寝て、頭部を湯に浸ける。頭に適度の刺激があり、10分位浸かると疲労回復やリフレッシュにとても効果がある)、9.露天の湯(肌がただれたり、ぶつぶつ湯負けができたりしたときに治すための湯)、10.蒸し湯(箱蒸し湯で、温泉蒸気により全身を蒸し、神経痛やリュウマチ、ダイエットなどに効能がある)、11.蒸気湯(98度の源泉が足もとの床板の下を流れ、源泉の蒸気を満たしたサウナ風呂のような湯)、日本一の酸性泉であり湯船内は無菌状態であるが、入湯すると体中がヒリヒリするほど刺激が強く、肌を強くこすると爛(ただ)れたりする。含有成分も多くトロリとした湯である。
- 効能は、1.リュウマチを含む神経痛、2.貧血症及び白血球減少症、3.皮膚病、3.体の免疫力や抗菌力の増強、4.疲労回復、健康増進、5.肝臓の働きを活発にする、6.全身の細胞の働きを目覚めさせ、若返らせるなどの効果があるといわれている。
- 難病に最も効く温泉としてガイドブックやテレビ、マスコミに何度も取り上げられているが、「万病に効く」というのは迷信であり、重症心臓病、重症高血圧症、悪性腫瘍などは禁忌症で入湯してはいけない。
- 薬師神社付近に源泉「大噴」から流れ出た含有成分が河床に沈着してできた特別天然記念物「北投石」がある。
- 「大噴」の南東側には草木一本も生えぬ爆裂後の荒涼とした裸地が広がり、多数の噴気孔からガスが煙をあげて吹き出している。この岩盤の地べたにゴザを敷き、軽装に毛布などを被って横になると数十分で体中から汗が噴き出てくる。これが有名な「岩盤浴」で地熱及び噴気孔を利用したもので、早朝から夕方まで大勢の人々が岩盤に寝そべるのは異様な光景である。更にテントが3ヶ所あり、この中には噴気臭が充満し、中に入るには勇気がいる。なお、「岩盤浴」は、国立公園内で勝手に行っている民間療法であり、玉川温泉とは無関係である。
- 玉川温泉、新玉川温泉はいずれも療養、保養温泉で、娯楽施設は一切なく、宿泊料金も他の温泉に比べて安い。但し、朝食、夕食ともバイキングである。玉川温泉に売店があり自炊に必要な日用品や食料品、野菜、酒や飲料水、新聞、雑誌などが常備されている。(収容人員1,400人)
- 共同湯:1(岩盤浴の人々が大勢通り、丸見えなので入湯には勇気がいる)。
- 交通:秋田新幹線田沢湖駅→八幡平頂上行きバス1時間30分、玉川温泉下車徒歩10分。花輪線八幡平駅→玉川温泉行きバス1時間15分終点下車徒歩10分。
- 車:東北道鹿角八幡平IC→R341号線経由51km。(いい湯鑑定団)
- 玉川温泉の詳細は「玉川温泉物語」参照。→玉川温泉物語
- 繋温泉つなぎおんせん:岩手県盛岡市繋
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)2,250リットル(★★★★)、2.泉質:単純硫化水素泉、PH8.9(弱アルカリ性泉)、3.泉温:75度、湧出量は多いが、含有成分が少なく湯は軽い。
- 概要:盛岡市街から西へ10km、盛岡の奥座敷といわれる温泉場。昔源義家が阿部貞任(あべのさだとう)を厨川(くりやがわ)の柵に攻めたとき、この地にやってきて戦陣の疲れを癒したといわれ、義家が馬を繋いだところから地名となった。現在も温泉場の中に「繋石」がある。開湯は康平年間(1058〜1065)といわれる。源泉数13、神経痛、リュウマチ、創傷などに効能がある。かっては雫石川沿いの山間にある湯治場であったが、昭和55年に御所湖が完成し、湖畔の観光温泉地として急速に近代化した。
- 宿は12軒(収容人員1,844人)。
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線盛岡駅→繋温泉行きバス30分、終点下車すぐ。
- 車:東北道盛岡IC→R46号線、県道経由10km。(いい湯鑑定団)
- 鶴の湯温泉つるのゆおんせん:秋田県仙北郡田沢湖町生保内先達国有林内
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)1,280リットル(★★★★★)、2.泉質:含食塩重曹硫化水素泉、含食塩炭酸鉄泉、PH7.7(弱アルカリ性泉)、3.泉温:61度、一軒宿としては湯量豊富、湯の乳白色が最も美しい。
- 概要:秋田・岩手県境にある乳頭山(にゅうとうざん)、またの名を烏帽子(えぼし)岳の西麓に点在する乳頭温泉郷の中で、一つだけ離れた湯の沢渓谷沿いにある秘湯。開湯は元和元年(1615)と伝えられ、この温泉郷では最も古く佐竹藩主も入湯したという。湧出量は毎分1,280リットルと一軒宿としては群を抜いて多い。
- 一泊では入りきれないほどたくさんの湯小屋があり、男湯5つ女湯6つの内訳は次の通り。露天風呂:混浴1、女性2の3つ、白湯:男女各1、とてもきれいなクルミのような乳白色の湯。黒湯:男女各1、ぬるりとしたやわらかい湯で晴れていると白、雨だと黒、普段は青みがかった日和見の湯。中の湯・滝の湯:それぞれ男女各1。滝の湯:打たせ湯。内湯:それぞれ男女各1、内湯は宿泊客しか入れませんから日中でも静かです。乳白色の内湯は、入ると体を真綿で包むように、柔らかい湯が体になじむ名湯。
- 神経痛、リュウマチ、胃腸病などに効能がある。保養、療養温泉で、娯楽施設はない。
- 宿は鶴の湯温泉(木造2階建35室)、鶴の湯別館「山の宿」(木造平家建 9室)。
- 共同湯:なし。
- 交通:秋田新幹線田沢湖駅→乳頭温泉行きバス44分、鶴の湯温泉入口下車徒歩50分、送迎車要予約10分。
- 車:東北道盛岡IC→R46号線、県道経由60km。
- 一生に一度は泊まりたい温泉宿の日本一に選ばれ、その後何度も旅行雑誌、ガイドブック、テレビなどのマスコミに取り上げられ全国から過剰に客が集まるようになった。最近の秘湯ブームで、日帰り入浴も行列する順番待ちしなければ入れないという過熱気味で、あまりに多くの人が入湯すると湯が汚れ、秘湯とはほど遠い状態になることを危惧する。(いい湯鑑定団)
- 藤七温泉とうしちおんせん:岩手県岩手郡松尾村寄木
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)280リットル(★★★★)、2.泉質:含硫化水素単純泉、PH2.8(酸性泉)、3.泉温:90度。
- 概要:国民保養温泉八幡平(はちまんたい)温泉郷の一つ。八幡平山頂から南に3km下った標高1,400m、北日本でも有数の高所に位置する温泉場で、露天風呂からの眺望が雄大。特に女性露天風呂からは岩手山の眺めがよい。湯は薄い白色、源泉数2。よく温まり、呼吸器病、神経性諸病、冷え性や婦人病、リューマチなどに効能がある。秋田県瀬美温泉姫の湯ホテル館主阿部信一が昭和初期に発見。保養、療養温泉で、娯楽施設はない。
- 宿は八幡平蓬莱荘(ほうらいそう)、彩雲荘(いさうんそう)の2軒(収容人員220人、いずれも冬季休業)
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線盛岡駅→八幡平蓬莱荘行きバス2時間、終点下車徒歩5分。
- 車:東北道松尾八幡平IC→アスピーテライン経由30km。(いい湯鑑定団)
- 鉛温泉なまりおんせん:岩手県花巻市鉛字中平
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)325リットル(★★★)、2.泉質:単純泉、PH8.1(弱アルカリ性泉)、3.泉温:63度、全国でも珍しい自然の立ち湯(深さ1.25m)で底から湯が沸き、泉質もいい。
- 概要:花巻市の西郊外、清流豊平川沿いの山間の温泉場。湯は無色透明、三つの湯のうち「白猿の湯」は深さ1。25mの湯壺の底から湯が湧いてくる立ち湯。全国でも珍しい湯で、田宮虎彦の小説「銀心中(くろがねしんじゅう)」の舞台となった。嘉吉3年(1443)に藤井家遠祖が発見、名の由来はこの山で金鉱が発掘され、これを隠すため鉛といったことによる。源泉数4、リュウマチ性疾患、運動機能障害、神経症、神経麻痺などに効能がある。保養、療養温泉で、娯楽施設はない。
- 宿は藤三旅館1軒(収容人員:旅館170人、自炊部300人)、自炊部の方が大きい全国的にも珍しい温泉。
- 共同湯:1。
- 交通:東北新幹線新花巻駅→新鉛温泉行きバス40分、鉛温泉下車徒歩5分。
- 車:東北道花巻南IC→豊沢川ぞいに県道で14km。(いい湯鑑定団)
- 花巻温泉はなまきおんせん:岩手県花巻市湯元
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)264リットル(★)、2.泉質:単純泉、PH7.2〜PH7.7(中性泉)、3.泉温:72.5度、収容人員からみて湧出量が極端に少ない。
- 概要:花巻市の北西郊外、丘陵地に台温泉から2km引き湯して公園計画と一体で開発された観光温泉地。大正12年に花巻温泉株式会社が鉄道敷設とともに経営したが、やがて鉄道は廃線、経営も昭和50年代に国際興業系列となった。源泉数1、他は台温泉からの引湯で無色透明。神経痛、リューマチなどに効能がある。
- 宿は6軒とも観光温泉で同一経営(収容人員2,172人)、湯はさら湯に近く、湯好きには不向き。
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線新花巻駅→花巻温泉行きバス20分、終点下車すぐ。
- 車:東北道花巻南IC→県道経由4km。(いい湯鑑定団)
- 蒸ノ温泉ふけのゆおんせん:秋田県鹿角市八幡平字熊沢国有林地内
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)35リットル(★)、2.泉質:硫黄泉、食塩泉、PH2.4(酸性泉)、3.泉温:96度、湧出量は数値的には少ないが、山峡の一軒宿であり湯船の湯量は普通。
- 概要:八幡平(はちまんたい)北西山麓、標高1,100m、山峡の高所にある温泉場。かっては地面に筵(むしろ)を敷き、その下から蒸気が噴出してくるオンドル式湯小屋が軒を連ね、東北では最も異色の温泉場であった。しかし、昭和48年春、大きな地響きとともに地獄谷一帯が崩壊し、湯小屋はすべて埋没してしまった。その後、オンドル式湯小屋は再建されることなく、当時の面影はまったくない。現在は、山小屋風の旅館部だけが営業を続けている。湯は薄い白色。神経痛、リューマチ、皮膚病などに効能がある。由来は宝永年間(1703〜1711)の発見といわれ、八幡平最古の名湯である。
- 宿は「ふけの湯ホテル」1軒(24室)。
- 共同湯:なし。
- 交通:JR花輪線八幡平駅→八幡平頂上行きバス1時間、蒸けの湯温泉下車、徒歩5分。
- 車:東北道松尾八幡平IC→R341号線、アスピーテライン経由30km。(いい湯鑑定団)
- 松川温泉まつかわおんせん:岩手県岩手郡松尾村松川温泉
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)3,669リットル(★★★★★)、2.泉質:単純硫化水素泉、PH3.1〜PH5.8(酸性泉)、3.泉温:78.5度、湯量豊富で湯の乳白色も岩手で一番きれい。
- 概要:国民保養温泉八幡平(はちまんたい)温泉郷の一つ。岩手山と八幡平に挟まれた標高800mに位置する温泉場。岩手県で第2位の湧出量を誇り、最もきれいな乳白色の湯の一つ。源泉数7、神経痛、リューマチ、動脈硬化症、金属中毒症、糖尿病、皮膚掻痒症、慢性湿疹、慢性膿皮症、運動機能障害、末梢循環障害などに効能がある。寛保3年(1743)伊藤西念が発見したといわれるが、その後長らく交通不便のため利用されることはなかった。バス道の開通などにより地熱発電所の開発などが進み、急速に開けた。保養温泉で娯楽施設はない。ナラやブナの原生林に囲まれ紅葉の美しい岩手の秘湯。
- 宿は松川荘、峡雲荘(きょううんそう)、松楓荘(しょうふうそう)の3軒(収容人員441人)。
- 共同湯:なし。
- 交通:東北新幹線盛岡駅→松川温泉行きバス2時間、終点下車。
- 車:東北道松尾八幡平IC→県道を経て18km。(いい湯鑑定団)
- 湯川温泉ゆかわおんせん:岩手県和賀郡湯田町湯川
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)595リットル(★★★)、2.泉質:ナトリウム・塩化物・硫酸塩泉、PH7.6 〜PH8.4(弱アルカリ性泉)、3.泉温:57.5〜80度。
- 概要:岩手県の南西部、湯田温泉郷の一つで、渓谷に沿った山峡の静かな温泉場。「湯本は遊び湯で湯川は湯治湯」という地口が示すように、北の湯本温泉が歓楽温泉化したのに対し、この温泉は今でも本格的な農民の湯治場として残っている。同名が多いので和賀湯川ともいう。三か所に別れており、入口が「出途(てと)の湯」、中心に「中の湯」があり湧出量が最も多く、その先に「奥の湯」がある。農閑期には岩手・秋田の農村から湯治客が訪れ、湯治専門の宿も多い。由来は不詳。源泉数6、創傷、慢性皮膚病、慢性婦人病、リュウマチなどに効能がある。
- 明治27年に正岡子規が訪れ、「山の湯や裸の上の天の川」の名句を残した。
- 宿は12軒(収容人員767人)。
- 共同湯:1。
- 交通:JR北上線ほっとゆだ駅→湯川温泉行きバス10分、終点下車すぐ。
- 車:秋田自動車道湯田IC→R107号線、県道経由7km。(いい湯鑑定団) →ほっとゆだ駅
- 湯本温泉ゆもとおんせん:岩手県和賀郡湯田町湯本
- 温泉の三要素:1.湧出量:(毎分)991リットル(★★★)、2.泉質:ナトリウム・硫酸塩・塩化物泉、PH7.3 〜PH8.4(弱アルカリ性泉)、3.泉温:85.5度、宿にもよるがそれほど湯量が多くは感じられない温泉場。
- 概要:岩手県の南西部、和賀川上流の浅い谷間の温泉場で湯田温泉郷の一つ。同名が多いので岩手湯本温泉ともいう。万治元年(1658)の開湯と伝えられる。南の湯川温泉と比べて歓楽色の強い町中の温泉。源泉数4、創傷、皮膚病、胃腸病、リュウマチなどに効能がある。
- 宿は12軒(収容人員750人)。
- 共同湯:1。
- 交通:JR北上線ほっとゆだ駅→盛岡行きバス10分、湯本下車徒歩1分〜10分。
- 車:秋田自動車道湯田IC→R107号線、県道経由7km。(いい湯鑑定団) →ほっとゆだ駅
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- 温泉場の数は現在20、次回の追加をお楽しみに。 2004年1月6日更新
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