アーサーおじさんのデジタルエッセイ578

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第578 終活のテキスト


 そういえば、その昔「終活」が、ほんとうに重要視されていた話を思い出した。古代エジプト時代のことである。
 死んだ人が冥界で必要になる「呪文」を、生前に前もって練習しておこうというもの。
クライマックスはその長い審判での「自己PR」「重役面接」にあたる、「申告」と「心臓の計量」などの予習であろうか。
現代就活で言う「面接のハウツー本」が存在していたのだ。
その名を「死者の書」という。
日本で言う閻魔様に当たるオシリス神が天国か地獄かの裁断をするために心臓を天秤にかけるのだが、その時に必要な手順がある。
 −−−審判者として12柱の神々が、杖を携えて椅子に腰掛けており、彼らの前には供えものがある。
正義の秤は広間の中央に置かれ、死者の良心を表す心臓が、秤にかけられている。
法と真実の象徴である羽毛は心臓と重さを比べられ、2つが等しくなかったら有罪の宣告を受けるのである。
そばには犬の顔をしたアヌビスが目盛が動くのを見守っている。
秤の反対側に死者の守護霊が立ち、その頭上には死者のへその緒が入った箱が置かれている。
それから審判が始まる。

42個にのぼる罪の否定告白、さまざまな宣言や呪文が蜿蜒と続く。
ここで死者は、心臓によって針が動かないように祈りのことばを捧げる。
「私の母なる心臓よ、審判にあたって、私にいじわるすることがないように。そなたは私の生命力にして、四肢を結び付けるものである。どうか幸福の国にともに来らんことを。どうか神の面前で私に対して何ら偽りを述べないようお願いします。」などなど。
こういう宣言に失敗すると直ちに心臓は怪獣アメミットに喰われ、王や被葬者の魂は消滅してしまい再生復活が出来なくなる。−−−
 死んだ後、残される遺族への処理を重視した「終活」に対して、こちらエジプトでは本人が「よいところ(冥界)」に登録するための就活に近い。
王家というものは黙って野垂れ死にすることが許されないようだ。
早くから塾やキャリアコースを選んで、試験に備える若者に似て、お疲れ様である。
 これから厚い年金も望めない。
医療費も軽視できない私たちにもそれなりの終活がありうるものの、加えてその先まで準備するのはムリである。
(審判の部分はWikipediaほかを参照して構成)
 
 
             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」 2012年2月26日更新


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