アーサーおじさんのデジタルエッセイ46
		
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		第46話 馬の背中
		
		
		「ロートレック展」を見た。馬を描いたものがある。鉛筆で描いてある。それも飛んでいるように走っている瞬間を間近から見たものである。その艶の描写といい、馬をよほど知っている人の描き込みである。
			
			筋肉の一本一本を知っているはずだ。彼は小躯であるが、解説を読むと、子供の頃に2回落馬して障害を得ている。なるほど、馬には詳しいのである。リンゴスターに似ている彼は、鬚を生やして娼婦達のベッドをうろうろしている。
			
			そして馬を描くのと同じ鋭さ、詳しさでその生態を描いている。脚色しない。触るようにはっきりと、筋肉・脂肪を描きぬく。
			
		
		
		
		モデル達は自分の醜態の正直な描写に笑いながら、その現実を突きつけるロートレックの優しさに共感する。
		
		「あんたもさ、"怪我"さえなきゃ、もてるいい男だったろうにねえ。」
		
		泣いている娼婦の側にも彼は居ることが出来た。
		
		「いいよ、私の泣いてるとこ、描いても」
		
		それは、癒しの目なのかも知れない。
		
		怪我を知っている人間は、怪我を見ている。それを隠さない。
		
		落馬し、脊髄損傷者となって体一つ動かせない人となった"クリストファー・リーブ"氏は米国の脊髄損傷者団体の重要な役を果たしている。
		
		首一つ動かせない今、スーパーマンではないが、人の苦しみを知る人となった。
		
		彼は人を救うために、心の中で空を飛んでいるのだろう。
		
		            ◎ノノ◎ 
		
		            (・●・)
		
		           「また、会いましょ」  2001年2月18日更新
		
		
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