アーサーおじさんのデジタルエッセイ453
日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む どこで見つけたのか思いだせないけれど、「マン・オン・ワイヤー」という映画のチラシを持っていた。
霧にけむるマンハッタンの最高高度410mの、二つの貿易ビル(ツインタワー)の屋上にワイヤーを張って、綱渡りをする男のシルエット。
アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞とある。
時間をつくって見に行った。
それは1974年の8月7日の事件である。
高層ビルでの綱渡りなど、不法であり、危険であり、許可などありえないために、長い期間に亘り、チームで密かに調べ上げ、偽って現地取材をしたり、準備をし、1トンに及ぶ機材を業者を装って、銀行強盗さながらに屋上に侵入し、隠れ、作業をし、何度も見つかりそうになり、諦めかけながらも、一晩での強行を実行するという、すがすがしい記録である。
その距離は42メートル。鋼鉄のワイヤーは200キログラム。空中で何度もの往復。
40分後には男は警察に逮捕される。しかしヒーローとなる。
いったいこれは何だろう?何が市民の心に起こったのだろう。
このために彼は、6年も費やしている。
ゼロからデータを入手して、計画を積み上げる。
仲間を探し、模型を作り、同サイズの練習場を作って、シミュレーションを繰り返す。
ビルの管理データを集め、もぐりこむ作戦を練る。
とても心に残ったのは、二つのビルの間にロープを張る方法である。
410mではどんな方法も地上とは無縁で行われる。
模型飛行機や投擲。
様々な検討を重ね、弓矢の方法を開発する。
60メートル飛ぶものを使い、60メートルの細いテグスを引っ張らせる。
その端にビニール紐を60メートル。
手繰り寄せると、そのまた先に、鋼鉄ロープ200キログラムを結ぶ。
こうやって、二つのビルの間に人間が渡れるロープを張るのだ。(補助の横綱も4本張る)この作業を、たった一回で行う。
そうだ!冒険とは、ロープを渡る事の前に、そーっと細いテグスを張っていくことなのだ。
小さく成功させ、次に中くらいの成功を呼び込む。
そしてその誘導によって、本当の冒険が可能になる。
最初のピンと張られた一本のテグスの先に夢を見ることができるかどうかなのだ。
◎ノノ◎
(・●・)
「また、お会いしましょ」 2009年7月20日更新