アーサーおじさんのデジタルエッセイ148

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第148話 きみ、怒っているの?


社員食堂で一人で食べている『アメリ』のような目をした若い女性が、食べ終えて、その細い人形のような首まで固まって、力のない視線を床の遠くに投げている。彼女は、小さな結晶の中心を見詰めている。それを感じている。けれどその中心のものが何だったのか、もう忘れている。そしてきっと、怒っている。

心の中に、最初、小さな結晶があって、そこに一日一日と生きていくうえでの様々なできごとが重なり、積もっていく。怒っている人の表情には、その大きな結晶が現われている。

最初の小さな結晶はなんだろう?

幼かったころの、母親不在の淋しさだろうか?父親の平手打ちだろうか?あるいは濡れ衣の兄弟ゲンカだろうか。

悲しくて、つらくて、理不尽で、答えの見えない−−まさに大人になって、その小さな結晶に、挫折や、失恋や、給料の不満や、友達の不和がくっついて、大きくなる。

そういう目を見ると、とてもつらくなる。私には助けられない。

彼女や、傷ついた子である人々。こころの隣によい結晶を、ほんのひとつ用意して、そちらに良い想い出を溜めていこうよ。それを眺めながら、暖かいスープを啜り、少し微笑もうよ。

             ◎ノノ◎
             (・●・)

      「また、お会いしましょ」 2003年2月16日更新


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